Sustainable Tourism

ローズウッドが描く「サーキュラーな未来」

出典:https://picasso.rosewoodhotelgroup.com/asset/2e82c1a4-1cf3-4abc-b449-265422611c81/RWHG-Impact-Sustainability-Report-2025.pdf

ローズウッドホテルが、初めてのサステナビリティレポートを発表しました。

その中で取り上げたいのが、「廃棄物」に対する向き合い方です。
単なる削減ではなく、価値へと変換する発想があります。

キーワードは「サーキュラー(循環)」

“捨てる前提”で考えられてきたものを、もう一度見直す。
そこから、新しいストーリーが生まれています。

廃棄されるはずだったものに、新しい物語を

例えば、ホテルで使われるリネン。

高品質なシーツやタオルは、わずかな傷や劣化によって現役を退きますが、それは終わりではありません。
スペインマドリッドにあるRosewood villa Magnaでは、アップサイクルを通じて、制服やエプロン、
さらにはゲスト用の特別なパジャマへと生まれ変わらせています。

さらに、このプロセスでは、社会的弱者や困難な状況にあった人々が関わります。
彼らが、その技術と手仕事によって、新たな価値を創り出していく。
素材だけでなく、人の人生そのものが再生していく循環とも言えます。

日本でも始まっている「循環」の実践

こうした動きは、世界のラグジュアリーホテルだけのものではありません。

私自身がサステナビリティのコンサルティングで関わらせていただいた、
青森県のOTTABIOさんの取り組みも、その象徴的な例のひとつです。

OTTABIOさんでは、1980年代にポーランド軍で使用されていたデッドストックのパジャマを活用し、
ホテルのパジャマとして再提案しています。

本来であれば眠ったままで終わるはずだった布が、
新しい文脈とともに、ゲストの体験の一部として息を吹き返す。

過去のストックが、未来の価値へとつながっていく——
まさにサーキュラーな発想です。

見えないところで進む、大きな変化

ローズウッドでは、水のあり方も見直されています。

Rosewood Doha(カタール・ドーハ)では、使い捨てのボトルを廃止し、
館内で浄水・充填・再利用を行う循環型システムを導入。
繰り返し使われるガラスボトルは、資源消費と輸送による環境負荷の削減につながっています。

目立たない取り組みですが、こうした積み重ねが、確実に未来を変えています。

廃棄物が、社会的価値へと変わる

飲料パックのような日常的な廃棄物も、新たな価値を持ち始めています。

New World Saigon Hotel(ベトナム・サイゴン)では、回収された素材は、
エコ製品として再生され、販売へ。
その収益は地域社会への支援や教育機関への寄付につながります。

つまりこれは、単なるリサイクルではなく、
環境価値と社会価値の両方を生み出す循環です。

「ない」から生まれる、豊かなクリエイティビティ

Rosewood Miyakojima(日本・沖縄宮古島)でも象徴的なエピソードが生まれています。

離島である宮古島では、いわゆるラグジュアリーな装飾を手掛けるパートナーを探すのは容易ではありません。
しかし2025年のホリデーシーズン、チームはその制約を「乗り越える」のではなく、
あえて「受け入れる」選択をしました。

そこで生まれたのが、宮古島の素材を使った特別なクリスマスツリーです。

地元アーティストとの協働により、
乾燥・半乾燥のクバの葉を用いたインスタレーションが制作されました。

沖縄で初となる「クバのクリスマスツリー」。

それは単なる装飾ではなく、
土地が育むものと、人々が大切にしてきた文化が融合した作品でした。

限られた環境だからこそ生まれる、土地に根ざしたサーキュラーな表現。
それは、既製の豪華さとは異なる、深い豊かさを感じさせます

「何を残すか」を選び直す時代へ

サーキュラー・ホスピタリティとは、
単にゴミを減らすことではありません。

それは、「どんな未来を残すのか」という意思の表れです。

アップサイクル、コンポスト、再利用。
そして、素材や人、地域の可能性を信じること。

“使って捨てる”という前提を手放したとき、
ホスピタリティは、もっと豊かで意味のある体験へと進化していきます。

旅もまた、変わり始めています。

消費の場から、
価値を共につくる場へ。

ローズウッドのサステナビリティレポートは、
その静かな変化を、確かに示していました。