観光RESASを触ってみたら、観光地データの面白さと課題が見えてきた
最近、観光RESASを活用して観光地の動向分析を行っています。
実際にデータを見てみると、「やはりそうだったか」と思うこともあれば、「意外とそうなんだ」と驚くこともあります。
今回は箱根や日光といった関東近郊の観光地と、東京都(中央区)や神奈川(横浜市)の比較、
また、インバウンドデータを見ながら感じたことをまとめてみました。
箱根と日光では強い季節が違う
2025年の箱根の動向を確認してみると、8月よりも11月の紅葉シーズンのほうが人流が圧倒的に大きいことが分かりました。
ここ数年、箱根では夏休みシーズンよりも紅葉シーズンの方が人を集めていると感じていましたが、
観光RESASで確認すると、その傾向は数字としても明確に表れていました。

一方で日光は少し違いました。
日光は夏休みシーズンにも一定の集客を維持しています。

同じ関東近郊の観光地であっても、必ずしも同じ動向とはなっていないことが分かり、
こうした地域特性を把握することの重要性を改めて感じます。
旅行者はガイドブックではなくSNSを見ている
さらに興味深かったのがインバウンド消費分析内の、訪日旅行に関する意識です。
訪日外国人旅行者が出発前に参考にした旅行情報源を見ると、
SNSや動画サイト(YouTubeなど)が大きな割合を占めています。
また、個人ブログも旅行ガイドブックを上回る利用率となっており、
旅行先を決める情報源が、紙媒体からデジタルへと大きく移行していることが分かります。

観光地側からすると、魅力的な観光資源を持っているだけでは十分ではなく、
その魅力がSNSや動画、ブログを通じて旅行検討段階の人に届いているかどうかが、観光需要を左右する時代になっています。
神奈川県はインバウンド来訪者数でも全国上位
観光・レジャー目的の来訪者数を見ると、神奈川県は全国7位でした。

箱根、横浜、鎌倉、江の島などを抱える神奈川県らしく、多くの外国人観光客を集めていることが分かります。
つまり神奈川県は決して「インバウンドに弱い県」ではありません。
むしろ全国的に見ても十分な集客力を持つ観光県と言えるでしょう。
しかしインバウンド消費額では別の景色が見える
一方で、インバウンド消費単価を確認すると状況は少し異なります。
東京都が圧倒的な規模を誇り、北海道や沖縄県が続く中、神奈川県との差は小さくありません。(右端)

ここで見えてくるのは、
「多くの人が訪れること」と「多くのお金が消費されること」は必ずしも同じではない
という事実です。
神奈川県は外国人観光客を集めることには成功しています。
しかし、宿泊や買い物などの高額消費は東京で発生している可能性があります。
実際に東京都中央区だけでも横浜市を大きく上回る外国人宿泊者数があり、
インバウンド消費の集中度の高さがうかがえます。
東京・中央区とは人の集まり方が違う
横浜観光の中心地である横浜駅~石川町駅エリアと、東京観光の中心地の1つ中央区エリアの
滞留人口を比較してみると、人の集まり方にも違いが見えてきます。

横浜駅~石川町駅エリアでは20代以下の構成比が比較的大きく、若年層の存在感が目立ちます。
一方で東京都中央区では30代、40代のボリュームが大きく、年代構成がより幅広くなっています。
総滞留人口も横浜駅~石川町駅エリアが約1億1,742万人であるのに対し、
中央区エリアは約1億3,376万人となっており、規模でも中央区が上回っています。
この違いがそのまま消費額に結び付くとは言えませんが、
インバウンド消費額や外国人宿泊者数で東京が突出している背景を考える際のヒントになりそうです。
横浜のインバウンドは台湾とアメリカが中心
横浜市の外国人延べ宿泊者数も確認してみました。

2025年のデータでは、
1.台湾(19.1%)
2.アメリカ(18.9%)
3.中国(15.6%)
が上位を占めています。
特に印象的だったのはアメリカ市場の大きさです。
横浜というとアジア圏の旅行者が中心という印象がありましたが、実際にはアメリカが台湾とほぼ同規模でした。
一方、東京都中央区ではアメリカが26%を超えてトップとなっています。

さらに外国人延べ宿泊者数そのものも、
・横浜市:約35万人
・東京都中央区:約326万人
と大きな差があります。
東京都全体ではなく中央区だけでこの規模という事実は、東京のインバウンド集客力の強さを物語っています。
データを組み合わせると地域の姿が立体的に見えてくる
今回、観光RESASを見ながら改めて感じたのは、データを組み合わせることの面白さです。
・箱根は夏場の需要が落ち込み紅葉シーズンが強くなっているが、鬼怒川は引き続き夏シーズンの需要がある。
・旅行者はSNSやYouTube、ブログを見て旅先を決めている。
・横浜には若年層が集まり、宿泊客は台湾・アメリカ・中国が中心。
・神奈川県は観光客数では全国有数の規模を誇る一方で、インバウンド消費額では東京との大きな差がある。
単純な観光客数だけでは見えてこない、
「誰が」「いつ」「どこから来て」「どんな情報を見て」「どこで消費しているのか」
という観光の実態が少しずつ立体的に見えてきます。
箱根の紅葉、鬼怒川の夏需要、横浜に集まる若い世代、そして東京に集中するインバウンド消費。
今回の分析を通じて、同じ首都圏でも観光の構造は大きく異なることが分かりました。
神奈川県は外国人観光客を集めることには成功していますが、
消費という観点ではまだ東京との差が見えてきます。
その差がどこで生まれているのかを考えることこそ、これからの観光戦略のヒントになるのかもしれません。
※本記事で紹介したデータは観光RESASをもとに分析したものです。
観光RESASには人流データ、クレジットカード決済データ、宿泊統計など複数のデータソースが活用されており、それぞれ集計方法や対象範囲が異なります。
実際の観光実態をそのまま表すものではありませんが、地域ごとの特徴や傾向を把握する上では非常に有効なデータだと感じています。
