Sustainable Tourism

Sustainable Travel International が ドキュメンタリーシリーズ『サステナブル・トラベル: WHERE NEXT?』をリリース

出所:https://sustainabletravel.org/where-next/

Sustainable Travel International が ドキュメンタリーシリーズ『サステナブル・トラベル: WHERE NEXT?』をリリースしました。11月7日時点で、16のエピソードが紹介されています。

すべてのエピソードを見ましたが、映像がとても美しいうえ、サステナブルな具体的取り組みと一緒に紹介されているため、非常に見ごたえがありました。

全16のそれぞれのエピソードを簡単に紹介したいと思います。

■South Western Railway サウスウェスタンレイルウェイ(英国)

より良い地球のために、より良い地域のために、より良い人のために、という3つのイニシアチブを以って2040年までにネットゼロを達成を目指している。

■Park City パークシティ(アメリカ合衆国ユタ州ソルトレイクシティ東部にある都市)

人口8,500人に対し、年間50万人の訪問がある都市。サステナブルトラベルでの繁栄を目指し、北米で最も野心的な気候変動目標、2030年までにネットゼロ達成を目指すと宣言。

■Edmonton エドモントン(カナダ)

サステナブルを意識するイベントプランナーが選びたくなる会議場がある。責任ある調達、ゴミ削減、余剰食材をフードバンクに寄付する取り組み等を行っている。

■Sonoma ソノマ(アメリカ合衆国カリフォルニア州)

深刻な森林火災を機にサステナブルな取り組みを始めた郡。マイカーを30%削減し、相乗り(car pool)にインセンティブを設ける等している。

■St.Kitts セントキッツ(カリブ海)

カリブ海に浮かぶ小さな島が激しい嵐に遭い、人気のビーチの砂が洗い流され岩だらけになって以来サステナビリティに取り組んでいる。例えばマリオットホテルはホンダワラを肥料にする等の取り組みをしている。

■Denmark デンマーク

世界のトップ 3 の持続可能な休暇先のうち 2 つがデンマークにある。デンマークには400キロメートルにもわたる自転車専用道路があり、キッチン自転車というユニークなサービスもある。

■Greater Victoria グレータービクトリア(カナダ ブリティッシュコロンビア州)

脱炭素化、循環型経済、エコシステム教育を推進している。ファストフード店ではコンポスタブル(堆肥化できる)容器を使用している。

■Coulibri Ridge (ドミニカ)

オフグリッドラグジュアリーの実現。全14室のハイエンドのリゾートホテルは、太陽、風力、雨水だけを利用して、地震や嵐から守られたセルフサステナブルな運営をしている。

■Ljubljana リュブリャナ(スロベニア)

1人当たりの緑地面積が世界最大の地域であり、EU最大の自動車乗り入れ禁止区域がある。(そのため騒音レベルが60デシベル下がった)市場ではローカルサプライチェーンを実現している。

■YHA ユースホステル(オーストラリア)

一大ネットワークであるYHAのユースホステルは、持続可能な運営に情熱を注いでいる。建物は、エネルギーや水の使用量を最小限に抑えられるように造られる等工夫されている。

■Oslo オスロ(ノルウェー)

首都であるにも関わらず、緑があり、公害のない空間であり、持続可能性が最重要課題となっている。2030年までにカーボンニュートラルな都市になることを誓約している。ホテルでは屋上&屋内農園や栽培している野菜やハーブを提供している。

■Australia オーストラリア

オーストラリアのトロピカル ノース クイーンズランドは、2 つのユネスコ自然遺産が交わる世界で唯一の場所。例えば、台風や嵐で傷ついたサンゴ礁を保護し、生態系を守る為に再度海に返す活動をしている。

■St Kitts セントキッツ島(カリブ海)

観光が環境と地域社会に機会と脅威の両方をもたらすことを認識し、観光戦略の中核にサステナビリティを置いた。子供への環境教育を推進しながら地域に目的地管理の重要性を根付かせている。

■Six Senses シックスセンシズ(スペイン イビサ島)

シックスセンシズではすべての決断が気候変動に影響を及ぼすと考えている。自然光を取り入れ、太陽光パネルや地熱の導入、ペットボトルの排除等を通して二酸化炭素排出量削減の為に取り組んでいる。

■Vail ベイル(アメリカ合衆国 コロラド州)

1960年代にベイルリゾートが法人化されて以来、状況が一変した。コミュニティは明確なGHG排出量削減目標を明示し、住民のマインドセットを促し、生態系を守る為に移動・輸送手段として自動車ではなく自転車の利用促進をしている。

■Barbados バルバドス島(カリブ海)

気候変動の危機に瀕している小さな島では、気候変動はあらゆる世代の課題であり、あらゆる策を講じなければならないことを認識している。ボランティアツーリズムで地域住民と訪問者が島の生態系の保護に貢献している。

日本初のゼロ・エネルギーホテル『ITOMACHI HOTEL 0』

愛媛県西条市に2023年5月にOPENした ITOMACHI HOTEL 0 は、環境省が定める「ZEB」認証を取得した日本初のホテルです。

愛媛県西条市に本社のある、半導体機器製造メーカーで再生エネルギーや地方創生、まちづくり事業も展開する株式会社アドバンテック社と、国内外で話題のホテルを手掛ける株式会社GOODTIME社が、隈研吾氏の建築設計により開業しました。

予約時に無理を言って、ホテルの話を伺いたいと申し出たところ、なんとGOODTIME社の明山社長がお見えになり、館内外をご案内くださいました!

ゼロエネルギーの仕組みが一目で理解できるインフォグラフィックス

ホテルのレセプションに到着するとまず目に飛び込んでくるのは、インフォグラフィックス。
(そこまで目立つように置かれているわけではないのですが、私のように、ゼロエネルギーを目的として泊まりに来る人にとっては目に飛び込んでくるはずです)
以下で紹介するのはデモ画面ですが、ホテルが消費しているエネルギー量と生み出しているエネルギー量が掲載されています。
ZEBのために蓄電池とコージェネ(CGS発電機)も用意したものの、開業以来使用したことが無く、太陽光発電で全てまかなえているとのことでした。
また災害時の避難所としても機能するように、電力供給が止まっても72時間自家発電で電気が使えるようになっています。

水道代が無料の西条市

西条市は湧き水が豊富で、上水道が無料の市としても知られています。
水の豊富な西条市ならではで、客室には水の流れる仕組みがみられる透明の蛇口があります。

サステナビリティを徹底した客室アメニティ

客室には当然ペットボトルの水は置いておらず、西条の湧き水が入ったボトルが用意されています。客室からウォーターボトルに水を汲んで出かけることも出来るし、街中で水を汲むことも出来ます。
併設する『いとまちマルシェ』で買い物をするときにも使えるエコバックも用意されています。

滞在に便利な設備『ゲストキッチン』を併設

宿泊スタイルは、朝食付きプランはあるものの、夕食は提供しておらず『いとまちマルシェ』や近隣の飲食店を紹介しています。あるいは、ホテル内にキッチンがあるのでよそで購入したものを持ちこんで調理をすることも出来ます。
訪問者に滞在中に街中に出てもらうことは、ホテルがサステナブルな地域づくりに貢献するのに重要な視点です。

サイクリストの滞在にも最適!

客室内にそのまま自転車を持ち込める仕様となっている上、駐輪場、コインランドリーもあり、サイクリストの滞在にも適しています。サステナブルツーリズムへの相性も抜群です。

『愛媛のたのしみ』を0から体験―愛媛づくしのホテル

  • 客室の色調は、伊予青石を基調にしたブルー
  • 朝食は、地元愛媛の産地から仕入れた旬の野菜や果物を使用
  • 砥部焼の窯元「遠藤窯」によるオリジナル湯呑と急須
  • 松山市「ICOI COFFEE」によるオリジナルドリップパック
  • 西条発の銘菓「たぬきまんじゅう」
  • 愛媛有数のお茶どころ新宮町で、古くから新宮茶のパイオニア「脇製茶」の緑茶
  • 愛媛在住の和紙デザイナーによる和紙アート
  • 西条の水の音をサンプリングした自動温泉構築システム「AISO」による館内音楽

等々、愛媛にどっぷり浸かった滞在ができます。愛媛を中心にホテル建設にかかわった方々が紹介されたパネルもあります。

ITOMACHI HOTEL 0 の生まれた経緯

実はこのホテル。ホテルありきで造られたのかとと思いきや、アドバンテック社が西条市の住民から意見を募って作られたのだそうです。
同社が再生可能エネルギーの拠点づくりのために地方をめぐる中で「人がいない」「何もない」「活気がない」という日本の地方都市の厳しい現実を実感させられました。地元西条も例外ではなく、「街のにぎわいを取り戻したいこと」、「若者や挑戦する人にチャンスを与えられる街にしたいこと」の2つを趣旨にした上で、隈研吾さんとプロジェクトを始動。住民の意見を取り入れたところ、ホテルという拠点が採用されたとのことでした。
どうしても「日本初」という冠にはこだわりたかったという明山社長。
水資源が豊富な西条市というブランドとも相まって、日本初のゼロエネルギーホテルが完成したようです。
オープン後は、市民から「帰省した親族が泊まる場所ができた」と喜ばれているそうです。

ITOMACHI HOTEL 0 を訪れてみて

念願叶って訪れたITOMACHI HOTEL 0では、

  • ゼロエネルギーを視覚にして伝えるインフォグラフィックス
  • 愛媛県産のものをとことん追求・表現した設備、備品、アメニティ、食事
  • ゼロエネルギーホテルを謳いながらも僅か60㎡の客室に最新のエアコンが3台も設置されていること、それが必要ないほどの客室の機密性の高さ
  • ホテル外への回遊を促す滞在の提案
  • 宿泊客に媚びる(主張する)ことなくスタイリッシュにサステナビリティを実現していること
  • 地元住民の声から生まれて、支持されているホテルであること
  • 災害時の避難拠点となっていること

等、私にとっては興奮ものでしたが、私のように”ゼロエネルギー”が滞在動機となり泊まりにくる客は全体の3%程度だそうです。(企業や団体の視察は除く)

明山社長も、「なんか素敵なホテルだな」とか「評判の良いホテルだから」と泊まりに来たら、実はゼロエネルギーホテルだったと気付いてくれる位で良いと思っている とのことでした。

旅行者がサステナビリティに熱心に取り組んでいる宿を選ぶという消費行動はまだまだ先の話になりそうですが、サステナビリティに取り組む宿に泊まった事実というのは、結果的に宿泊客にとって後味の良いものになるのだろうと思います。
宿泊業では、滞在前と滞在中の印象を良くすることは比較的手が付けやすくアイデアも出やすいですが、滞在後の印象を良くすることは難しく、ハードルが高いものです。
その点、サステナビリティ経営に注力している宿は滞在後の評価を上げることができるのが大きなアドバンテージとなるのだろうと考えさせられた滞在となりました。


Sentosa Development Corporation has joined as a Member of the Global Sustainable Tourism Council (GSTC)

Global Sustainable Tourism Council(GSTC)とは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会は、世界的な旅行および観光分野における観光産業界の専門家や、政府機関のための持続可能な開発の基準を定め、管理する国際非営利団体です。