Sustainable Tourism

クウェートで進行中の持続可能な観光プロジェクト

Source: https://www.zawya.com/en/business/travel-and-tourism/major-sustainable-tourism-project-coming-up-in-kuwait-vpk56yxr

Summery

  • 持続可能な都市開発のグローバルリーダー企業である『URB』は、クウェートの 100,000 人の住民にネットゼロカーボンライフスタイルを提供するXZero City の設計を発表。
  • クウェートの南部地域の1,600 ヘクタールの開発は、医療、観光、テクノロジー、教育、小売、エンターテイメントなどのさまざまなハブで創出される 30,000 の住宅ユニットと 30,000 のグリーンな仕事を提供するために計画されている。
  • XZero は、5 つ星のエコリゾートやエコロッジなど、さまざまな環境に優しいホスピタリティ施設を通じて、持続可能な観光を促進。
  • 自給自足の都市とするため、
    • コミュニティガーデン
    • バイオドーム
    • アクアポニックス(水耕栽培と養殖を掛け合わせた、次世代の環境保全型農業。水産養殖の「Aquaculture」と、水耕栽培の「Hydroponics」からなる造語で、魚と植物を同じシステムで育てる新しい農業)
    • 垂直農場(高さのある建築物の階層や、傾斜面をつかってする農業)
    • 塩水農業

  等都市農法を採り入れている。

  • 廃棄物と水を現場でリサイクルしながら、必要なすべての再生可能エネルギーを地元で生成。

Consideration

文中では、CEOのBaharash Bagherian 氏は、XZero が将来の都市の新しいベンチマークを設定すると述べていました。

プロジェクトのサイト https://urb.ae/projects/xzero/ には下記のマスタープランが掲載されています。

出所:https://urb.ae/projects/xzero/ マスタープラン より

この蝶々のような形は非常に計算しつくされており、わくわくするような都市計画です。

  • 歩道に最適な日陰の提供
  • 風の流れを考えた構造によるエネルギー需要削減
  • 居住者の徒歩距離の短縮
  • 貯水と湿潤、排水を計算した雨水管理
  • 食料、エネルギー、水 + 廃棄物に対処するハイテク生物塩類農業
  • エネルギー、水、廃棄物ソリューションを備えたスケーラブルな農場
  • 景観の比率を最大化し、歩きやすい都市となるような車両アクセスの制限
  • 自転車と電動バギー専用通路の設置による炭素排出の削減
  • サイクリングと電動バギーステーションに隣接したEVシャトルバス

そのほかにも様々な記載がありましたが、ツーリズムに関しては5つ星のエコリゾートやロッジ、ネイチャーセンター、ビジターセンター等を設けるとの記述がありました。

一般的に観光地と言えば、遺産があったり、自然があったり、景勝地であったり、歴史が感じられたりと何かしらの名所があるわけですが、今回のXZero Cityでは、基本的には居住地であるわけです。恐らく視察組は世界各地から押し寄せると思うのですが、観光客は果たして何を目当てにやってくるのか、いまのところイメージが湧きません。

XZero Cityが完成した暁には、持続可能な観光地だからと一般の旅行者も関心を持つような社会になっていると良いと思います。

日本初のゼロ・エネルギーホテル『ITOMACHI HOTEL 0』

愛媛県西条市に2023年5月にOPENした ITOMACHI HOTEL 0 は、環境省が定める「ZEB」認証を取得した日本初のホテルです。

愛媛県西条市に本社のある、半導体機器製造メーカーで再生エネルギーや地方創生、まちづくり事業も展開する株式会社アドバンテック社と、国内外で話題のホテルを手掛ける株式会社GOODTIME社が、隈研吾氏の建築設計により開業しました。

予約時に無理を言って、ホテルの話を伺いたいと申し出たところ、なんとGOODTIME社の明山社長がお見えになり、館内外をご案内くださいました!

ゼロエネルギーの仕組みが一目で理解できるインフォグラフィックス

ホテルのレセプションに到着するとまず目に飛び込んでくるのは、インフォグラフィックス。
(そこまで目立つように置かれているわけではないのですが、私のように、ゼロエネルギーを目的として泊まりに来る人にとっては目に飛び込んでくるはずです)
以下で紹介するのはデモ画面ですが、ホテルが消費しているエネルギー量と生み出しているエネルギー量が掲載されています。
ZEBのために蓄電池とコージェネ(CGS発電機)も用意したものの、開業以来使用したことが無く、太陽光発電で全てまかなえているとのことでした。
また災害時の避難所としても機能するように、電力供給が止まっても72時間自家発電で電気が使えるようになっています。

水道代が無料の西条市

西条市は湧き水が豊富で、上水道が無料の市としても知られています。
水の豊富な西条市ならではで、客室には水の流れる仕組みがみられる透明の蛇口があります。

サステナビリティを徹底した客室アメニティ

客室には当然ペットボトルの水は置いておらず、西条の湧き水が入ったボトルが用意されています。客室からウォーターボトルに水を汲んで出かけることも出来るし、街中で水を汲むことも出来ます。
併設する『いとまちマルシェ』で買い物をするときにも使えるエコバックも用意されています。

滞在に便利な設備『ゲストキッチン』を併設

宿泊スタイルは、朝食付きプランはあるものの、夕食は提供しておらず『いとまちマルシェ』や近隣の飲食店を紹介しています。あるいは、ホテル内にキッチンがあるのでよそで購入したものを持ちこんで調理をすることも出来ます。
訪問者に滞在中に街中に出てもらうことは、ホテルがサステナブルな地域づくりに貢献するのに重要な視点です。

サイクリストの滞在にも最適!

客室内にそのまま自転車を持ち込める仕様となっている上、駐輪場、コインランドリーもあり、サイクリストの滞在にも適しています。サステナブルツーリズムへの相性も抜群です。

『愛媛のたのしみ』を0から体験―愛媛づくしのホテル

  • 客室の色調は、伊予青石を基調にしたブルー
  • 朝食は、地元愛媛の産地から仕入れた旬の野菜や果物を使用
  • 砥部焼の窯元「遠藤窯」によるオリジナル湯呑と急須
  • 松山市「ICOI COFFEE」によるオリジナルドリップパック
  • 西条発の銘菓「たぬきまんじゅう」
  • 愛媛有数のお茶どころ新宮町で、古くから新宮茶のパイオニア「脇製茶」の緑茶
  • 愛媛在住の和紙デザイナーによる和紙アート
  • 西条の水の音をサンプリングした自動温泉構築システム「AISO」による館内音楽

等々、愛媛にどっぷり浸かった滞在ができます。愛媛を中心にホテル建設にかかわった方々が紹介されたパネルもあります。

ITOMACHI HOTEL 0 の生まれた経緯

実はこのホテル。ホテルありきで造られたのかとと思いきや、アドバンテック社が西条市の住民から意見を募って作られたのだそうです。
同社が再生可能エネルギーの拠点づくりのために地方をめぐる中で「人がいない」「何もない」「活気がない」という日本の地方都市の厳しい現実を実感させられました。地元西条も例外ではなく、「街のにぎわいを取り戻したいこと」、「若者や挑戦する人にチャンスを与えられる街にしたいこと」の2つを趣旨にした上で、隈研吾さんとプロジェクトを始動。住民の意見を取り入れたところ、ホテルという拠点が採用されたとのことでした。
どうしても「日本初」という冠にはこだわりたかったという明山社長。
水資源が豊富な西条市というブランドとも相まって、日本初のゼロエネルギーホテルが完成したようです。
オープン後は、市民から「帰省した親族が泊まる場所ができた」と喜ばれているそうです。

ITOMACHI HOTEL 0 を訪れてみて

念願叶って訪れたITOMACHI HOTEL 0では、

  • ゼロエネルギーを視覚にして伝えるインフォグラフィックス
  • 愛媛県産のものをとことん追求・表現した設備、備品、アメニティ、食事
  • ゼロエネルギーホテルを謳いながらも僅か60㎡の客室に最新のエアコンが3台も設置されていること、それが必要ないほどの客室の機密性の高さ
  • ホテル外への回遊を促す滞在の提案
  • 宿泊客に媚びる(主張する)ことなくスタイリッシュにサステナビリティを実現していること
  • 地元住民の声から生まれて、支持されているホテルであること
  • 災害時の避難拠点となっていること

等、私にとっては興奮ものでしたが、私のように”ゼロエネルギー”が滞在動機となり泊まりにくる客は全体の3%程度だそうです。(企業や団体の視察は除く)

明山社長も、「なんか素敵なホテルだな」とか「評判の良いホテルだから」と泊まりに来たら、実はゼロエネルギーホテルだったと気付いてくれる位で良いと思っている とのことでした。

旅行者がサステナビリティに熱心に取り組んでいる宿を選ぶという消費行動はまだまだ先の話になりそうですが、サステナビリティに取り組む宿に泊まった事実というのは、結果的に宿泊客にとって後味の良いものになるのだろうと思います。
宿泊業では、滞在前と滞在中の印象を良くすることは比較的手が付けやすくアイデアも出やすいですが、滞在後の印象を良くすることは難しく、ハードルが高いものです。
その点、サステナビリティ経営に注力している宿は滞在後の評価を上げることができるのが大きなアドバンテージとなるのだろうと考えさせられた滞在となりました。


Sentosa Development Corporation has joined as a Member of the Global Sustainable Tourism Council (GSTC)

Global Sustainable Tourism Council(GSTC)とは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会は、世界的な旅行および観光分野における観光産業界の専門家や、政府機関のための持続可能な開発の基準を定め、管理する国際非営利団体です。