Sustainable Tourism

アメックスグローバルビジネストラベルESGレポート2021

2022年5月31日

Source: https://www.gstcouncil.org/amex-gbt-esg-report-2021/ 

Summery

  • アメックスグローバルビジネストラベル(Amex GBT)は、2021年のESGレポートにて、環境とそのローカルおよびグローバルコミュニティに関して可能な限り最も持続可能な方法でビジネスを運営するとコミットした。
  • 環境の持続可能性に関するAmexGBTの目標
    • ーグリーンビジネス旅行の市場としてAmexGBTを確立する
    • ー2050年までに航空をネットゼロカーボンに向けて推進する
  • 科学に基づいたネットゼロの目標を達成するために、Amex GBTは、グリーンホテルの業界標準を設定するGlobal Sustainable Tourism Council(GSTC)とのコラボレーションを発表
  • Amex GBT Global Business Consultingは、クライアントが旅行を可能にしながら排出量を削減できる、GreenCompass™を立ち上げた。
  • 彼らはまた、持続可能な航空燃料(SAF)の供給と需要の拡大を支援するためにシェル航空と提携を結び、世界経済フォーラムの「クリーンスカイフォートゥモロー」(持続可能な航空燃料の割合を2030年までに10%に増加させる)に署名。
  • AmexGBTは市場に基づいて構築されました炭素の計算と報告、炭素のオフセットと挿入、および持続可能性に専念する従業員リソースグループであるGreen@GBTを立ち上げた

持続可能なホテルの調達・推進

Amex GBTは、GSTCの持続可能な観光原則の採用を推進。GSTCの基準を満たす宿泊施設を優遇し、将来的には、GSTC分析が予約プロセスに組み込まれ、旅行者が持続可能なホテルを選択できるようにする。

認定された持続可能なホテルを優先

Amex GBTを通じて毎年何百万もの宿泊が予約されているため、旅行者をより環境に配慮した選択肢に導くことで、クライアントの影響は業界全体の変化に大きな影響を与える可能性がある。

Consideration

Amex ESG 2021 REPORTより井川作成

右上の図は、Amex GBTのESGレポートに掲載されていたマテリアリティマップです。

外部重要度・内部重要度ともに重要度が高い項目から見ると、危機管理マネジメント、コーポレートファイナンスに次いで、「グリーン製品・サービス」と環境に関する挙げていて関心度の高さが感じられます。

右下の図は、2018年以降のカーボンフットプリントの推移で、スコープ2.3.の削減が重要であることを訴えています。しかしながら、スコープ3に関しては、3.6として従業員の出張費についてのみ公表しており、Amex GBTで手配した出張旅行についても記述が一切ありません。手配した出張旅行についても算出の必要があるはずですので、今後の情報開示が求められるようになるでしょう。

とはいえ、レポートからは、『企業の出張を取り扱う私たち(Amex GBT)が、旅行者、交通機関、宿泊施設、旅行会社を巻き込みながら、旅行のエコシステム全体を脱炭素の道へ導く役目を担うんだ』という強い使命感を感じます。

ある調査によれば、旅行および観光収入全体の28.4%は 企業旅行によるものと言われています。まずはこの4分の1の行動が変わるだけでも大きなインパクトを生むでしょう。

ビジネス旅行から持続可能な旅行を普及させるのは非常に理にかなっていると考えています。ビジネス旅行は基本的に個人の支出ではなく会社が費用を負担するため、社会の潮流が「費用を払ってでも持続可能な旅行スタイルを選択するのが当然」となれば、企業のESG評価にも関わる為、投資家の評価が重要な大企業ほどそのような出張旅行を従業員に徹底させるでしょう。

そうするとIR施設の一部を担うリゾートホテルを運営するような大手の宿泊施設が、上記で言うGSTC分析で高評価となるよう持続可能な取り組みへの動きが加速し、それが定着すると中小零細企業でも【取り組んで当たり前】の状況を生みます。

サステナブルツーリズム定着へは、このような順序を踏むのが王道であると考えています。

日本初のゼロ・エネルギーホテル『ITOMACHI HOTEL 0』

愛媛県西条市に2023年5月にOPENした ITOMACHI HOTEL 0 は、環境省が定める「ZEB」認証を取得した日本初のホテルです。

愛媛県西条市に本社のある、半導体機器製造メーカーで再生エネルギーや地方創生、まちづくり事業も展開する株式会社アドバンテック社と、国内外で話題のホテルを手掛ける株式会社GOODTIME社が、隈研吾氏の建築設計により開業しました。

予約時に無理を言って、ホテルの話を伺いたいと申し出たところ、なんとGOODTIME社の明山社長がお見えになり、館内外をご案内くださいました!

ゼロエネルギーの仕組みが一目で理解できるインフォグラフィックス

ホテルのレセプションに到着するとまず目に飛び込んでくるのは、インフォグラフィックス。
(そこまで目立つように置かれているわけではないのですが、私のように、ゼロエネルギーを目的として泊まりに来る人にとっては目に飛び込んでくるはずです)
以下で紹介するのはデモ画面ですが、ホテルが消費しているエネルギー量と生み出しているエネルギー量が掲載されています。
ZEBのために蓄電池とコージェネ(CGS発電機)も用意したものの、開業以来使用したことが無く、太陽光発電で全てまかなえているとのことでした。
また災害時の避難所としても機能するように、電力供給が止まっても72時間自家発電で電気が使えるようになっています。

水道代が無料の西条市

西条市は湧き水が豊富で、上水道が無料の市としても知られています。
水の豊富な西条市ならではで、客室には水の流れる仕組みがみられる透明の蛇口があります。

サステナビリティを徹底した客室アメニティ

客室には当然ペットボトルの水は置いておらず、西条の湧き水が入ったボトルが用意されています。客室からウォーターボトルに水を汲んで出かけることも出来るし、街中で水を汲むことも出来ます。
併設する『いとまちマルシェ』で買い物をするときにも使えるエコバックも用意されています。

滞在に便利な設備『ゲストキッチン』を併設

宿泊スタイルは、朝食付きプランはあるものの、夕食は提供しておらず『いとまちマルシェ』や近隣の飲食店を紹介しています。あるいは、ホテル内にキッチンがあるのでよそで購入したものを持ちこんで調理をすることも出来ます。
訪問者に滞在中に街中に出てもらうことは、ホテルがサステナブルな地域づくりに貢献するのに重要な視点です。

サイクリストの滞在にも最適!

客室内にそのまま自転車を持ち込める仕様となっている上、駐輪場、コインランドリーもあり、サイクリストの滞在にも適しています。サステナブルツーリズムへの相性も抜群です。

『愛媛のたのしみ』を0から体験―愛媛づくしのホテル

  • 客室の色調は、伊予青石を基調にしたブルー
  • 朝食は、地元愛媛の産地から仕入れた旬の野菜や果物を使用
  • 砥部焼の窯元「遠藤窯」によるオリジナル湯呑と急須
  • 松山市「ICOI COFFEE」によるオリジナルドリップパック
  • 西条発の銘菓「たぬきまんじゅう」
  • 愛媛有数のお茶どころ新宮町で、古くから新宮茶のパイオニア「脇製茶」の緑茶
  • 愛媛在住の和紙デザイナーによる和紙アート
  • 西条の水の音をサンプリングした自動温泉構築システム「AISO」による館内音楽

等々、愛媛にどっぷり浸かった滞在ができます。愛媛を中心にホテル建設にかかわった方々が紹介されたパネルもあります。

ITOMACHI HOTEL 0 の生まれた経緯

実はこのホテル。ホテルありきで造られたのかとと思いきや、アドバンテック社が西条市の住民から意見を募って作られたのだそうです。
同社が再生可能エネルギーの拠点づくりのために地方をめぐる中で「人がいない」「何もない」「活気がない」という日本の地方都市の厳しい現実を実感させられました。地元西条も例外ではなく、「街のにぎわいを取り戻したいこと」、「若者や挑戦する人にチャンスを与えられる街にしたいこと」の2つを趣旨にした上で、隈研吾さんとプロジェクトを始動。住民の意見を取り入れたところ、ホテルという拠点が採用されたとのことでした。
どうしても「日本初」という冠にはこだわりたかったという明山社長。
水資源が豊富な西条市というブランドとも相まって、日本初のゼロエネルギーホテルが完成したようです。
オープン後は、市民から「帰省した親族が泊まる場所ができた」と喜ばれているそうです。

ITOMACHI HOTEL 0 を訪れてみて

念願叶って訪れたITOMACHI HOTEL 0では、

  • ゼロエネルギーを視覚にして伝えるインフォグラフィックス
  • 愛媛県産のものをとことん追求・表現した設備、備品、アメニティ、食事
  • ゼロエネルギーホテルを謳いながらも僅か60㎡の客室に最新のエアコンが3台も設置されていること、それが必要ないほどの客室の機密性の高さ
  • ホテル外への回遊を促す滞在の提案
  • 宿泊客に媚びる(主張する)ことなくスタイリッシュにサステナビリティを実現していること
  • 地元住民の声から生まれて、支持されているホテルであること
  • 災害時の避難拠点となっていること

等、私にとっては興奮ものでしたが、私のように”ゼロエネルギー”が滞在動機となり泊まりにくる客は全体の3%程度だそうです。(企業や団体の視察は除く)

明山社長も、「なんか素敵なホテルだな」とか「評判の良いホテルだから」と泊まりに来たら、実はゼロエネルギーホテルだったと気付いてくれる位で良いと思っている とのことでした。

旅行者がサステナビリティに熱心に取り組んでいる宿を選ぶという消費行動はまだまだ先の話になりそうですが、サステナビリティに取り組む宿に泊まった事実というのは、結果的に宿泊客にとって後味の良いものになるのだろうと思います。
宿泊業では、滞在前と滞在中の印象を良くすることは比較的手が付けやすくアイデアも出やすいですが、滞在後の印象を良くすることは難しく、ハードルが高いものです。
その点、サステナビリティ経営に注力している宿は滞在後の評価を上げることができるのが大きなアドバンテージとなるのだろうと考えさせられた滞在となりました。


Sentosa Development Corporation has joined as a Member of the Global Sustainable Tourism Council (GSTC)

Global Sustainable Tourism Council(GSTC)とは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会は、世界的な旅行および観光分野における観光産業界の専門家や、政府機関のための持続可能な開発の基準を定め、管理する国際非営利団体です。