Sustainable Tourism

ギリシャで最高の持続可能な観光体験

Source: https://www.lonelyplanet.com/articles/sustainable-greece

Summary

  • ギリシャは常に世界で最も人気のある目的地の1つであり、数十年にわたる観光業の段階的なな成長により、州と業界の両方がその環境への影響を意識するようになり、現代の旅行の環境問題の最前線の取り組みをしている。
  • 過去数年にわたって、新しく、環境に優しく、スマートなテクノロジーとインフラストラクチャを備え、多くの訪問者と長期滞在者がある中で自然の美しさを維持し、地域社会に利益を公平に分配することを目指している

【生態系の保護】

  • 何十年もの間、国が推進するサマーバケーションモデルで、一部の好アクセスなエリアはマスツーリズムの影響を受けたが、ギリシャの大半は影響を受けなかったため、環境に優しい手法でゼロから開発されている。
  • ギリシャにはラムサール条約の下で保護された10の優れた湿地と、ヨーロッパ生態ネットワークNatura2000で保護される446の地域(国土の4分の1以上)があり、800以上のエリアが国で保護されている。動植物はヨーロッパの中で最も多様で、309種類(内61種はギリシャにのみ生息)はEUの法律で保護されており、チチュウカイモンクアザラシやアカウミガメのような希少で絶滅の危機に瀕している水生種は、法律の下でそれぞれの水中公園で厳重に保護されている。

【車両の無い自給自足の島】

  • ほとんどの島には空港がなく、フェリーでしか行くことができない。通常、ほとんどの小さな島では車両は不要であり、一部の島では車両の全面的または部分的な禁止がある。また、一部の島々は再生可能エネルギー源を使用してエネルギー自給を達成。プラスチックを使わないようにするという野心的な目標を設定した島もあり、多くの島々がそれに続いている。さらに電気自動車とグリーンエネルギーのみを使用した最先端の技術を使用して、島全体を影響のない区域にする「スマート&サステナブルアイランド」という革新的な実験もある。

持続可能でおいしい食べ物】

  • ギリシャは、特に大都市の外では、果物や野菜を国内で栽培。有機生産のはヨーロッパで最も高く、主に旬の食材を食べる文化が定着している。これにより、ギリシャの農産物はより美味しくなり、集約農業が減り、環境への負担が軽減されている。最後に、国の主な肉製品である羊と山羊は、放し飼いが一般的。

【精神と地球にやさしいレクリエーション】【水中レジャー】

  • ギリシャの山々と国立公園の比類のない自然の美しさの中でのハイキング、最小限のエコロジカルフットプリントと手頃な価格で楽しめるセーリング、ランニング、ウォータースポーツ、パラグライダー等、ほとんど環境負荷の無いレクリエーションが充実している。
  • ギリシャの海の海は、豊富な海洋生物、素晴らしい水中の風景、初心者のダイバーもアクセスできる数十の難破船(および一部の航空機)は水中「博物館」となっている。

【オフシーズンが新たなトレンド】

  • 年間平均250日以上の日照(国の南部では最大300日)と非常に穏やかな冬があるため、環境に配慮する旅行者がピークシーズンにギリシャを訪れる理由はない。冬の間でさえ、ギリシャには魅力があり、知識が豊富でベテランの旅行者がますます魅力的だと感じている。

Consideration

世界銀行のデータによると、ギリシャの観光客到着数は、コロナの影響を受ける前、2019年時点では3,400万人ありました。アテネ、イラクリオン、ロードスの3都市に1,000万人以上の観光客が訪れており、文中の「マスツーリズムの影響を受けたエリア」がこの辺のことを指すのだろうと察します。

今だから感じることですが、マスツーリズムにより持続可能な開発ができなかった人気観光地は、国や旅行会社のキャンペーンの影響(責任)も少なからずあるのでしょう。

国や業界が危機感を持ち、ギリシャの夏と冬でも17℃という穏やかな気候で通年型の観光地であることアピールし、より環境負荷の少ない過ごし方を提案しているのは賢明なことです。

これまで主要な観光地として取り上げられず、それがために環境保全ができている地域を、今後の“主要で持続可能な観光地”として打ち出していくことは、マスツーリズムで荒らされたこれまでの主要な観光地に休息を与えることにも繋がります。

あらゆる国や地域において持続可能な観光地が、これまでの主要観光地に台頭していくことが今後の観光産業に求められています。

日本初のゼロ・エネルギーホテル『ITOMACHI HOTEL 0』

愛媛県西条市に2023年5月にOPENした ITOMACHI HOTEL 0 は、環境省が定める「ZEB」認証を取得した日本初のホテルです。

愛媛県西条市に本社のある、半導体機器製造メーカーで再生エネルギーや地方創生、まちづくり事業も展開する株式会社アドバンテック社と、国内外で話題のホテルを手掛ける株式会社GOODTIME社が、隈研吾氏の建築設計により開業しました。

予約時に無理を言って、ホテルの話を伺いたいと申し出たところ、なんとGOODTIME社の明山社長がお見えになり、館内外をご案内くださいました!

ゼロエネルギーの仕組みが一目で理解できるインフォグラフィックス

ホテルのレセプションに到着するとまず目に飛び込んでくるのは、インフォグラフィックス。
(そこまで目立つように置かれているわけではないのですが、私のように、ゼロエネルギーを目的として泊まりに来る人にとっては目に飛び込んでくるはずです)
以下で紹介するのはデモ画面ですが、ホテルが消費しているエネルギー量と生み出しているエネルギー量が掲載されています。
ZEBのために蓄電池とコージェネ(CGS発電機)も用意したものの、開業以来使用したことが無く、太陽光発電で全てまかなえているとのことでした。
また災害時の避難所としても機能するように、電力供給が止まっても72時間自家発電で電気が使えるようになっています。

水道代が無料の西条市

西条市は湧き水が豊富で、上水道が無料の市としても知られています。
水の豊富な西条市ならではで、客室には水の流れる仕組みがみられる透明の蛇口があります。

サステナビリティを徹底した客室アメニティ

客室には当然ペットボトルの水は置いておらず、西条の湧き水が入ったボトルが用意されています。客室からウォーターボトルに水を汲んで出かけることも出来るし、街中で水を汲むことも出来ます。
併設する『いとまちマルシェ』で買い物をするときにも使えるエコバックも用意されています。

滞在に便利な設備『ゲストキッチン』を併設

宿泊スタイルは、朝食付きプランはあるものの、夕食は提供しておらず『いとまちマルシェ』や近隣の飲食店を紹介しています。あるいは、ホテル内にキッチンがあるのでよそで購入したものを持ちこんで調理をすることも出来ます。
訪問者に滞在中に街中に出てもらうことは、ホテルがサステナブルな地域づくりに貢献するのに重要な視点です。

サイクリストの滞在にも最適!

客室内にそのまま自転車を持ち込める仕様となっている上、駐輪場、コインランドリーもあり、サイクリストの滞在にも適しています。サステナブルツーリズムへの相性も抜群です。

『愛媛のたのしみ』を0から体験―愛媛づくしのホテル

  • 客室の色調は、伊予青石を基調にしたブルー
  • 朝食は、地元愛媛の産地から仕入れた旬の野菜や果物を使用
  • 砥部焼の窯元「遠藤窯」によるオリジナル湯呑と急須
  • 松山市「ICOI COFFEE」によるオリジナルドリップパック
  • 西条発の銘菓「たぬきまんじゅう」
  • 愛媛有数のお茶どころ新宮町で、古くから新宮茶のパイオニア「脇製茶」の緑茶
  • 愛媛在住の和紙デザイナーによる和紙アート
  • 西条の水の音をサンプリングした自動温泉構築システム「AISO」による館内音楽

等々、愛媛にどっぷり浸かった滞在ができます。愛媛を中心にホテル建設にかかわった方々が紹介されたパネルもあります。

ITOMACHI HOTEL 0 の生まれた経緯

実はこのホテル。ホテルありきで造られたのかとと思いきや、アドバンテック社が西条市の住民から意見を募って作られたのだそうです。
同社が再生可能エネルギーの拠点づくりのために地方をめぐる中で「人がいない」「何もない」「活気がない」という日本の地方都市の厳しい現実を実感させられました。地元西条も例外ではなく、「街のにぎわいを取り戻したいこと」、「若者や挑戦する人にチャンスを与えられる街にしたいこと」の2つを趣旨にした上で、隈研吾さんとプロジェクトを始動。住民の意見を取り入れたところ、ホテルという拠点が採用されたとのことでした。
どうしても「日本初」という冠にはこだわりたかったという明山社長。
水資源が豊富な西条市というブランドとも相まって、日本初のゼロエネルギーホテルが完成したようです。
オープン後は、市民から「帰省した親族が泊まる場所ができた」と喜ばれているそうです。

ITOMACHI HOTEL 0 を訪れてみて

念願叶って訪れたITOMACHI HOTEL 0では、

  • ゼロエネルギーを視覚にして伝えるインフォグラフィックス
  • 愛媛県産のものをとことん追求・表現した設備、備品、アメニティ、食事
  • ゼロエネルギーホテルを謳いながらも僅か60㎡の客室に最新のエアコンが3台も設置されていること、それが必要ないほどの客室の機密性の高さ
  • ホテル外への回遊を促す滞在の提案
  • 宿泊客に媚びる(主張する)ことなくスタイリッシュにサステナビリティを実現していること
  • 地元住民の声から生まれて、支持されているホテルであること
  • 災害時の避難拠点となっていること

等、私にとっては興奮ものでしたが、私のように”ゼロエネルギー”が滞在動機となり泊まりにくる客は全体の3%程度だそうです。(企業や団体の視察は除く)

明山社長も、「なんか素敵なホテルだな」とか「評判の良いホテルだから」と泊まりに来たら、実はゼロエネルギーホテルだったと気付いてくれる位で良いと思っている とのことでした。

旅行者がサステナビリティに熱心に取り組んでいる宿を選ぶという消費行動はまだまだ先の話になりそうですが、サステナビリティに取り組む宿に泊まった事実というのは、結果的に宿泊客にとって後味の良いものになるのだろうと思います。
宿泊業では、滞在前と滞在中の印象を良くすることは比較的手が付けやすくアイデアも出やすいですが、滞在後の印象を良くすることは難しく、ハードルが高いものです。
その点、サステナビリティ経営に注力している宿は滞在後の評価を上げることができるのが大きなアドバンテージとなるのだろうと考えさせられた滞在となりました。


Sentosa Development Corporation has joined as a Member of the Global Sustainable Tourism Council (GSTC)

Global Sustainable Tourism Council(GSTC)とは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会は、世界的な旅行および観光分野における観光産業界の専門家や、政府機関のための持続可能な開発の基準を定め、管理する国際非営利団体です。