SDGs of Tourism industry

2022年8月開催 第11回APEC観光大臣会合

Source: https://www.traveldailynews.asia/thailand-ready-to-host-the-11th-apec-tourism-ministerial-me

Summery

  • 2022 年 8 月 14 日から 20 日までバンコクで開催される第 60 回 APEC 観光作業部会会合と同時に開催される第11回APEC観光大臣会合には、APEC 加盟国から 300 人を超える閣僚や関係者が参加する予定
  • タイの観光・スポーツ大臣であるピファット・ラチャキットプラカーン氏は、会議は、パンデミック後の持続可能な回復を促進する『リジェネラティブ・ツーリズム』のコンセプトの下、『低炭素』アプローチで開催されます」と述べた。

Regenerative Tourism リジェネラティブ・ツーリズム

  • コンセプトは、環境、文化、地域の生活様式に与える可能性のあるすべての影響を考慮して、ツーリズムを開発および促進するための総合的なアプローチに焦点を当てている。
  • この戦略では、観光名所の回復だけでなく、魅力に合わせて観光客数のバランスを取り、さらに重要なこととして、観光客の数よりもサービスの質と一貫性を優先することにより、持続可能な観光開発に重点を置く。
  • 目的は、地元の人々が包括的で公平な観光に参加して恩恵を受けることを奨励し、文化的および環境保全に対する意識を刺激することも含む。

Bio-Circular-Green (BCG) Economy Model バイオサーキュラーグリーンエコノミーモデル

  • タイの観光産業を復活させるために使用されている、安全で包括的で持続可能な旅行を目的としたもの。
  • BCG 経済モデルは、生物多様性と文化的豊かさにおけるタイの強みを活用し、国連の持続可能な開発目標 (SDG) に準拠している。

Regenerative Tourism「再生型観光」の概念は、パンデミック後の観光の回復においてAPECメンバー経済に利益をもたらすことが期待されている。

Consideration

サステナブルツーリズムが「持続可能な観光」と言われるのに対し、
Regenerative Tourism リジェネラティブ・ツーリズム/Regenerative travel リジェネラティブ・トラベルは「再生型観光」とも言われ、観光地のリジェネレーション(再生)を意図したものであり、旅行先に着いたときよりも、去るときのほうが環境がより良く改善されているという状況を目指しています。
この概念は、CENTER FOR RESPONSIBLE TRAVEL, DESTINATION STEWARDSHIP CENTER 等、6つのNPO団体から成り立った Future of Tourism Coalition という連合が策定した以下の13の原則に基づいています。

  • 原則1:「全体像を見る」
    • 観光産業ビジネスだけでなく、その生態系、天然資源、文化的資産と伝統、コミュニティ、美学、構築されたインフラストラクチャなど、目的地全体に関係していることを認識すること。
  • 原則2:「サステナビリティ基準の使用」
    • グローバル・サステナブル・ツーリズム・カウンシル (GSTC) によって維持されている、国際的に承認された公的に入手可能なサステイナブル・ツーリズムの最低基準を尊重する。
  • 原則3:「共同目的地管理」
    • コミュニティの多様性を代表する政府、民間部門、市民社会組織が平等に参加する共同管理構造を通じて、すべての観光の開発を目指す。
  • 原則4:「量より質」
    • 訪問者の量ではなく、訪問の質に基づいて観光開発を管理し、目的地の特徴を維持し、地域社会に利益をもたらしながら、旅行体験を向上させる。
  • 原則5:「公平な所得分配を要求」
    • コミュニティ内での観光収入の独占を阻止する政策を設定する。
  • 原則6:「観光負担軽減」
    • 地方税負担、環境および社会への影響、客観的に検証可能な混乱の観点から、あらゆる観光にかかわるコストを説明します。この投資が地域社会と地域環境の最適化に結び付けられるようにする。
  • 原則7:「経済的成長の再定義」
    • GDP の成長への直接的な貢献よりも、中小企業の発展、所得の分配、持続可能な地元のサプライ チェーンの強化など、目的地の利益を特定する指標を優先する。
  • 原則8:「気候への影響緩和」
    • 温室効果ガス排出量の削減の必要性について、受け入れられている科学的コンセンサスに従うよう努めます。環境に優しいインフラストラクチャに投資し、空、海、陸などの観光に関連する輸送排出量を迅速に削減する。
  • 原則9:「資源の循環の輪の閉鎖」
    • パンデミック後の安全が許せば、観光事業による使い捨てプラスチックの使用をやめ、循環資源の使用に移行する。
  • 原則10:「土地の利用の制限」
    • 占有率の高いリゾート観光は限られた地域に制限する。地理的特徴、多様な経済、地元民のアクセス、および重要な生態系を維持するために、リゾートが海岸、島、および山岳地帯を占領するのを防ぐ。
  • 原則11:「重点市場の多様化」
    • 外国人観光客だけでなく、災害や危機、パンデミック等の非常時に、より回復力があり、自然および文化遺産の認識および価値を高める可能性のある国内観光客にも注力する
  • 原則12:「場所の固有性の保護」
    • 観光地の多様性が旅行に行く動機付けとなる為、観光地の独自性と固有性の保存・強化し、それらに貢献・利益をもたらすビジネスを支援する。
  • 原則13:「責任ある事業運営」
    • 行動を以ってこれらの原則をサポートし、より高品質の商品と体験を提供するローカルサプライチェーンを大事にする観光事業と関連企業にインセンティブと報酬を与える。
出所:FUTURE OF TOURISM ウェブサイト より

(出所:FUTURE OF TOURISM ウェブサイト

この旅行先に着いた時よりも帰る時の方が、観光地が改善されているというのは素晴らしい考え方です。必ずしも旅行消費(滞在)と観光地改善が同時に行われる必要は無くて、滞在時に消費したお金が循環し、その当該観光地が後々良くなるという考え方でも良いはずです。

リジェネラティブツーリズムとサステナブルツーリズムの両方の視点を持った観光地経営が今後益々必要となってきます。

日本初のゼロ・エネルギーホテル『ITOMACHI HOTEL 0』

愛媛県西条市に2023年5月にOPENした ITOMACHI HOTEL 0 は、環境省が定める「ZEB」認証を取得した日本初のホテルです。

愛媛県西条市に本社のある、半導体機器製造メーカーで再生エネルギーや地方創生、まちづくり事業も展開する株式会社アドバンテック社と、国内外で話題のホテルを手掛ける株式会社GOODTIME社が、隈研吾氏の建築設計により開業しました。

予約時に無理を言って、ホテルの話を伺いたいと申し出たところ、なんとGOODTIME社の明山社長がお見えになり、館内外をご案内くださいました!

ゼロエネルギーの仕組みが一目で理解できるインフォグラフィックス

ホテルのレセプションに到着するとまず目に飛び込んでくるのは、インフォグラフィックス。
(そこまで目立つように置かれているわけではないのですが、私のように、ゼロエネルギーを目的として泊まりに来る人にとっては目に飛び込んでくるはずです)
以下で紹介するのはデモ画面ですが、ホテルが消費しているエネルギー量と生み出しているエネルギー量が掲載されています。
ZEBのために蓄電池とコージェネ(CGS発電機)も用意したものの、開業以来使用したことが無く、太陽光発電で全てまかなえているとのことでした。
また災害時の避難所としても機能するように、電力供給が止まっても72時間自家発電で電気が使えるようになっています。

水道代が無料の西条市

西条市は湧き水が豊富で、上水道が無料の市としても知られています。
水の豊富な西条市ならではで、客室には水の流れる仕組みがみられる透明の蛇口があります。

サステナビリティを徹底した客室アメニティ

客室には当然ペットボトルの水は置いておらず、西条の湧き水が入ったボトルが用意されています。客室からウォーターボトルに水を汲んで出かけることも出来るし、街中で水を汲むことも出来ます。
併設する『いとまちマルシェ』で買い物をするときにも使えるエコバックも用意されています。

滞在に便利な設備『ゲストキッチン』を併設

宿泊スタイルは、朝食付きプランはあるものの、夕食は提供しておらず『いとまちマルシェ』や近隣の飲食店を紹介しています。あるいは、ホテル内にキッチンがあるのでよそで購入したものを持ちこんで調理をすることも出来ます。
訪問者に滞在中に街中に出てもらうことは、ホテルがサステナブルな地域づくりに貢献するのに重要な視点です。

サイクリストの滞在にも最適!

客室内にそのまま自転車を持ち込める仕様となっている上、駐輪場、コインランドリーもあり、サイクリストの滞在にも適しています。サステナブルツーリズムへの相性も抜群です。

『愛媛のたのしみ』を0から体験―愛媛づくしのホテル

  • 客室の色調は、伊予青石を基調にしたブルー
  • 朝食は、地元愛媛の産地から仕入れた旬の野菜や果物を使用
  • 砥部焼の窯元「遠藤窯」によるオリジナル湯呑と急須
  • 松山市「ICOI COFFEE」によるオリジナルドリップパック
  • 西条発の銘菓「たぬきまんじゅう」
  • 愛媛有数のお茶どころ新宮町で、古くから新宮茶のパイオニア「脇製茶」の緑茶
  • 愛媛在住の和紙デザイナーによる和紙アート
  • 西条の水の音をサンプリングした自動温泉構築システム「AISO」による館内音楽

等々、愛媛にどっぷり浸かった滞在ができます。愛媛を中心にホテル建設にかかわった方々が紹介されたパネルもあります。

ITOMACHI HOTEL 0 の生まれた経緯

実はこのホテル。ホテルありきで造られたのかとと思いきや、アドバンテック社が西条市の住民から意見を募って作られたのだそうです。
同社が再生可能エネルギーの拠点づくりのために地方をめぐる中で「人がいない」「何もない」「活気がない」という日本の地方都市の厳しい現実を実感させられました。地元西条も例外ではなく、「街のにぎわいを取り戻したいこと」、「若者や挑戦する人にチャンスを与えられる街にしたいこと」の2つを趣旨にした上で、隈研吾さんとプロジェクトを始動。住民の意見を取り入れたところ、ホテルという拠点が採用されたとのことでした。
どうしても「日本初」という冠にはこだわりたかったという明山社長。
水資源が豊富な西条市というブランドとも相まって、日本初のゼロエネルギーホテルが完成したようです。
オープン後は、市民から「帰省した親族が泊まる場所ができた」と喜ばれているそうです。

ITOMACHI HOTEL 0 を訪れてみて

念願叶って訪れたITOMACHI HOTEL 0では、

  • ゼロエネルギーを視覚にして伝えるインフォグラフィックス
  • 愛媛県産のものをとことん追求・表現した設備、備品、アメニティ、食事
  • ゼロエネルギーホテルを謳いながらも僅か60㎡の客室に最新のエアコンが3台も設置されていること、それが必要ないほどの客室の機密性の高さ
  • ホテル外への回遊を促す滞在の提案
  • 宿泊客に媚びる(主張する)ことなくスタイリッシュにサステナビリティを実現していること
  • 地元住民の声から生まれて、支持されているホテルであること
  • 災害時の避難拠点となっていること

等、私にとっては興奮ものでしたが、私のように”ゼロエネルギー”が滞在動機となり泊まりにくる客は全体の3%程度だそうです。(企業や団体の視察は除く)

明山社長も、「なんか素敵なホテルだな」とか「評判の良いホテルだから」と泊まりに来たら、実はゼロエネルギーホテルだったと気付いてくれる位で良いと思っている とのことでした。

旅行者がサステナビリティに熱心に取り組んでいる宿を選ぶという消費行動はまだまだ先の話になりそうですが、サステナビリティに取り組む宿に泊まった事実というのは、結果的に宿泊客にとって後味の良いものになるのだろうと思います。
宿泊業では、滞在前と滞在中の印象を良くすることは比較的手が付けやすくアイデアも出やすいですが、滞在後の印象を良くすることは難しく、ハードルが高いものです。
その点、サステナビリティ経営に注力している宿は滞在後の評価を上げることができるのが大きなアドバンテージとなるのだろうと考えさせられた滞在となりました。


Sentosa Development Corporation has joined as a Member of the Global Sustainable Tourism Council (GSTC)

Global Sustainable Tourism Council(GSTC)とは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会は、世界的な旅行および観光分野における観光産業界の専門家や、政府機関のための持続可能な開発の基準を定め、管理する国際非営利団体です。