Sastainability

地球温暖化は情熱的なサステナビリティ活動を原因としたい!!―OXFAM Belgie(オックスファム ベルギー)

この記事のタイトルは、情熱的なサステナビリティ活動がかえって地球温暖化を促しているという揶揄ではなく、CO2排出等による物理的な地球温暖化は当然NGであるものの、サステナビリティ活動を情熱を持って温度感高く行うことで精神的な地球温暖化になると良いね!というメッセージが込められています。

この標語を掲げたポストカードを発行しているのは、ベルギーのオックスファムですが、その大元となるのが「OXFAM International」。1995年に独立したNGOのグループによって設立されました。

「オックスファム」という名前は、1942年にイギリスで設立されたオックスフォード飢餓救済委員会(Oxford Committee for Famine Relief)に由来しています。第二次世界大戦中に敵占領下のギリシャで飢えに苦しむ女性や子供たちに、食料供給を送るよう運動。戦後、OXFAMは活動を続け、ヨーロッパ中の貧しい人々を支援。その後、関心は発展途上国の人々のニーズに移行。現在、約 70 か国で数千のパートナー、同盟国、コミュニティと協力して、緊急事態における命の救助と保護、人々の生計の再建を支援し、真の永続的な変化を求める運動を行っており、女性の権利を活動すべての中心に据えています。

出所:https://www.oxfam.org/en/our-history

OXFAMの活動は幅広いですがフェアトレード製品を扱うショップもあり、ベルギーを訪れた際に、Oxfam-Wereldwinkel Leuven を訪れフェアトレード製品がずらりと並ぶ店内を視察してきました。こじんまりとした静かな店内で、店主1人で営業していましたが、店内掲示やパンフレットからはOXFAM(ベルギー)のフェアトレードに対する姿勢が十分に伝わってきました。

店内のコーヒー売り場:パッケージは女性の顔写真が目立ちます。
購入したコーヒー:WOMEN’S HOPE

こちらのコーヒーの生産者は、Rebuild Women’s Hope (RWH)
OXFAMのサイトでは以下のように紹介されています。(一部抜粋)

コンゴのキブ湖にあるイジウィ島にあるコーヒー協同組合で、この地域の標高が高いため高品質のコーヒーを提供しています。2022 年からオックスファムと提携しており、RWH 会員の 70% は女性です。
この地域での高品質のコーヒーの生産と輸送は、混乱と不安定な政治情勢により困難に直面しており、不利な状況下で隣国ルワンダとの密輸が長年続いています。
この問題に対抗するために、協同組合の創設者マルセリン・ブザは女性を組織し、コーヒー生産の付加価値を高めることを目指しました。さらに、この協同組合は女性のエンパワーメントにも焦点を当てており、女性が国全体の希望であるという希望に基づいています。
持続可能なコーヒー生産の構築と女性のエンパワーメントへの取り組みにより、Rebuild Women’s Hope は地域内の前向きな変化のモデルとなっています。

  • 若いながらも野心的な協同組合として、すでに 2 つの追加の洗浄ステーションを建設し、2022 年から新たにオーガニック認定を受けています。
  • RWH は、産科クリニックと小児科クリニックの建設に加えて、洗浄ステーション近くの飲料水とトイレの提供に投資し、農業技術、パン焼き、石鹸作り、裁縫などのトレーニングを提供しています。
  • 彼らは女性の権利に関するワークショップを通じて女性のエンパワーメントを促進しています。
  • 彼らはアグロエコロジーな栽培技術に重点を置き、浸食と闘い、持続的に土壌の肥沃度を高め、副収入を得るために果樹を植えています。同じくキブ湖にある協同組合であるムンガノと提携し、ムンガノの長年にわたる現場の知識から学び、継続的に改善を続けています。
出所:https://www.oxfamfairtrade.be/en/partners/rebuild-womens-hope/

ベルギーと言えばチョコレート🍫ということで、OXFAM Belgieのチョコレートのパンフレットに掲載されている内容を紹介したいと思います。

カカオ農家が極度の貧困の中で暮らしていること、悲惨な森林伐採や蔓延する児童労働についてどう思いますか?

  • 極度の貧困:チョコレートは10億ドル規模のビジネスですが、コートジボワールのカカオ農家の収入は、尊厳を持って生きるのに必要な収入の3分の1にしかすぎません。
  • 児童労働:農家は労働者に給料を支払ったり、子供たちを畑で働かせるほどの収入が無いことが良くあります。
  • 森林破壊:カカオを栽培するために熱帯雨林の大部分が失われています。
  • カカオ産業が真の意味で持続可能になるためには、カカオ農家は自分の製品に対して公正な価格を受け取らなければなりません。カカオ農家が生活収入を得ることは人権に他なりません。

数字で見るチョコレート

  • 世界のカカオ生産量の70%は西アフリカから来ています。40%はコートジボワールから来ています。
  • チョコレートの年間売上高は1,000億ドルというビッグビジネスです。
  • チョコレートの世界売上高は、わずか主要7社で約70%を占めています。
  • 500万~600万の小規模農家が、年間400万トンのカカオを栽培しています。ヨーロッパは約60%を消費しています。
  • コートジボワールとガーナのカカオ畑では、210万人の子供たちが過酷な労働や危険な行動にさらされています。
  • 1990年~2015年の間にコートジボワールの森林の85%が消失しました。そのうち30%がカカオ栽培によるものです。
  • フェアトレードインターナショナルによると、農家の生活収入を保証するカカオの市場価格は3,468米ドル/トンです。

OXFAMは持続可能なカカオ分野に取り組んでいます

  • 私たちは企業や政府に対して、農家と環境を両方にとってこの分野を真に持続可能なものにする責任を指摘します。
  • あらゆるサプライチェーンにおいて人権と環境への配慮を義務付ける法律の制定に取り組んでいます。私たち自身も農家と持続的かつ長期的な関係を結び農家が持続可能な収入を得られるよう公正な対価を支払うことでモデルを務めています。
  • 今後フェアトレードの最低価格とプレミアムに加えて、カカオ1トンごとにコートジボワールのパートナーに追加のOXFAMプレミアムを支払います。2019年のプレミアムは1,068米ドル/トンでした。

カカオ市場のサステナビリティが時代錯誤的に不十分であることと、OXFAM ベルギーがその惨状を本気で打開しようという姿勢が良く伝わります。

OXFAMのようなサステナビリティ活動に取り組みたいと強く思うとともに、このような企業・団体が1社でも多く生まれ、このような事業活動こそ評価される社会を作っていかなければなりません。

日本初のゼロ・エネルギーホテル『ITOMACHI HOTEL 0』

愛媛県西条市に2023年5月にOPENした ITOMACHI HOTEL 0 は、環境省が定める「ZEB」認証を取得した日本初のホテルです。

愛媛県西条市に本社のある、半導体機器製造メーカーで再生エネルギーや地方創生、まちづくり事業も展開する株式会社アドバンテック社と、国内外で話題のホテルを手掛ける株式会社GOODTIME社が、隈研吾氏の建築設計により開業しました。

予約時に無理を言って、ホテルの話を伺いたいと申し出たところ、なんとGOODTIME社の明山社長がお見えになり、館内外をご案内くださいました!

ゼロエネルギーの仕組みが一目で理解できるインフォグラフィックス

ホテルのレセプションに到着するとまず目に飛び込んでくるのは、インフォグラフィックス。
(そこまで目立つように置かれているわけではないのですが、私のように、ゼロエネルギーを目的として泊まりに来る人にとっては目に飛び込んでくるはずです)
以下で紹介するのはデモ画面ですが、ホテルが消費しているエネルギー量と生み出しているエネルギー量が掲載されています。
ZEBのために蓄電池とコージェネ(CGS発電機)も用意したものの、開業以来使用したことが無く、太陽光発電で全てまかなえているとのことでした。
また災害時の避難所としても機能するように、電力供給が止まっても72時間自家発電で電気が使えるようになっています。

水道代が無料の西条市

西条市は湧き水が豊富で、上水道が無料の市としても知られています。
水の豊富な西条市ならではで、客室には水の流れる仕組みがみられる透明の蛇口があります。

サステナビリティを徹底した客室アメニティ

客室には当然ペットボトルの水は置いておらず、西条の湧き水が入ったボトルが用意されています。客室からウォーターボトルに水を汲んで出かけることも出来るし、街中で水を汲むことも出来ます。
併設する『いとまちマルシェ』で買い物をするときにも使えるエコバックも用意されています。

滞在に便利な設備『ゲストキッチン』を併設

宿泊スタイルは、朝食付きプランはあるものの、夕食は提供しておらず『いとまちマルシェ』や近隣の飲食店を紹介しています。あるいは、ホテル内にキッチンがあるのでよそで購入したものを持ちこんで調理をすることも出来ます。
訪問者に滞在中に街中に出てもらうことは、ホテルがサステナブルな地域づくりに貢献するのに重要な視点です。

サイクリストの滞在にも最適!

客室内にそのまま自転車を持ち込める仕様となっている上、駐輪場、コインランドリーもあり、サイクリストの滞在にも適しています。サステナブルツーリズムへの相性も抜群です。

『愛媛のたのしみ』を0から体験―愛媛づくしのホテル

  • 客室の色調は、伊予青石を基調にしたブルー
  • 朝食は、地元愛媛の産地から仕入れた旬の野菜や果物を使用
  • 砥部焼の窯元「遠藤窯」によるオリジナル湯呑と急須
  • 松山市「ICOI COFFEE」によるオリジナルドリップパック
  • 西条発の銘菓「たぬきまんじゅう」
  • 愛媛有数のお茶どころ新宮町で、古くから新宮茶のパイオニア「脇製茶」の緑茶
  • 愛媛在住の和紙デザイナーによる和紙アート
  • 西条の水の音をサンプリングした自動温泉構築システム「AISO」による館内音楽

等々、愛媛にどっぷり浸かった滞在ができます。愛媛を中心にホテル建設にかかわった方々が紹介されたパネルもあります。

ITOMACHI HOTEL 0 の生まれた経緯

実はこのホテル。ホテルありきで造られたのかとと思いきや、アドバンテック社が西条市の住民から意見を募って作られたのだそうです。
同社が再生可能エネルギーの拠点づくりのために地方をめぐる中で「人がいない」「何もない」「活気がない」という日本の地方都市の厳しい現実を実感させられました。地元西条も例外ではなく、「街のにぎわいを取り戻したいこと」、「若者や挑戦する人にチャンスを与えられる街にしたいこと」の2つを趣旨にした上で、隈研吾さんとプロジェクトを始動。住民の意見を取り入れたところ、ホテルという拠点が採用されたとのことでした。
どうしても「日本初」という冠にはこだわりたかったという明山社長。
水資源が豊富な西条市というブランドとも相まって、日本初のゼロエネルギーホテルが完成したようです。
オープン後は、市民から「帰省した親族が泊まる場所ができた」と喜ばれているそうです。

ITOMACHI HOTEL 0 を訪れてみて

念願叶って訪れたITOMACHI HOTEL 0では、

  • ゼロエネルギーを視覚にして伝えるインフォグラフィックス
  • 愛媛県産のものをとことん追求・表現した設備、備品、アメニティ、食事
  • ゼロエネルギーホテルを謳いながらも僅か60㎡の客室に最新のエアコンが3台も設置されていること、それが必要ないほどの客室の機密性の高さ
  • ホテル外への回遊を促す滞在の提案
  • 宿泊客に媚びる(主張する)ことなくスタイリッシュにサステナビリティを実現していること
  • 地元住民の声から生まれて、支持されているホテルであること
  • 災害時の避難拠点となっていること

等、私にとっては興奮ものでしたが、私のように”ゼロエネルギー”が滞在動機となり泊まりにくる客は全体の3%程度だそうです。(企業や団体の視察は除く)

明山社長も、「なんか素敵なホテルだな」とか「評判の良いホテルだから」と泊まりに来たら、実はゼロエネルギーホテルだったと気付いてくれる位で良いと思っている とのことでした。

旅行者がサステナビリティに熱心に取り組んでいる宿を選ぶという消費行動はまだまだ先の話になりそうですが、サステナビリティに取り組む宿に泊まった事実というのは、結果的に宿泊客にとって後味の良いものになるのだろうと思います。
宿泊業では、滞在前と滞在中の印象を良くすることは比較的手が付けやすくアイデアも出やすいですが、滞在後の印象を良くすることは難しく、ハードルが高いものです。
その点、サステナビリティ経営に注力している宿は滞在後の評価を上げることができるのが大きなアドバンテージとなるのだろうと考えさせられた滞在となりました。


Sentosa Development Corporation has joined as a Member of the Global Sustainable Tourism Council (GSTC)

Global Sustainable Tourism Council(GSTC)とは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会は、世界的な旅行および観光分野における観光産業界の専門家や、政府機関のための持続可能な開発の基準を定め、管理する国際非営利団体です。