ESG of Tourism industry

2025年までにNet zeroを掲げる世界最大のホステルチェーン「a&o hostel」

a&o hostelは、2000年にベルリンにて設立。

現在25の都市と 9 つのヨーロッパの国で40のホステルを運営し、28,500床を有する世界最大のホステルチェーンです。運営する全てのホテルが GreenSignの認証を受けています。2017 年の収益は約 1 億 1,700 万ユーロ(1ユーロ=146円の場合、約171億円)、宿泊数は 410 万件超。

このホステルチェーンは、2025 年までにヨーロッパのホステル チェーンとして初めて CO2 ニュートラルになること を目標に掲げています。

現在、a&o は1 泊あたり 5.9 kg の CO2 しか消費していないため、他のホテルが示す消費量よりも 75% 低い値になっているとのことです。

(一般的にホテルに1泊するのに1人当たり40KgのCO2を排出しているといわれているで、非常に少なく抑えられているという印象です!)

a&oのサイトには、ESGページが設けられており、そこでは、持続可能性の 3 つの柱 (経済、環境、社会) が定義されています。

  1. 経済
    a&o は成長のために、利益は会社に還元⇒新しい施設を開設⇒雇用を創出。
    ヨーロッパの都市観光における安定した成長に注力し、環境への適合性や顧客からのフィードバックなどの分野で統一基準を導入。
  2. 環境
    CO2 排出量調査を完了した最初のドイツのホテル チェーン。施設内スペースの効率的な利用やその他の要因により、2 つ星から 3 つ星のホテルの 3 分の 1 の抑制に成功。
    a&o が全事業所に導入している取り組みは、省エネ・節水製品の導入、効率的な清掃、廃棄物の量の削減、全室からの不要な紙やプラスチックの広告の撤去など。
    多くのホテルでは自転車レンタル サービスが提供されており、公共交通機関も近いため、二酸化炭素排出量の削減に貢献。
  3. 社会
    企業理念の重要な要素は、「従業員の利益を促進すること」。
    従業員とゲストを対等に扱うことを宣言。従業員のための利益分配制度や、独自のアカデミーとDual Degree (デュアルディグリー)コースプログラムを設置。
    会社の着実な成長は、a&o が実習生にポジションを提供し、卒業後も彼らのトレーニングに投資し続けることと理解し、スタッフに幅広い魅力的なキャリアオプションを提供している。

参考:https://www.aohostels.com/en/green/

このように、環境だけでなくあらゆる資源に対して持続可能な経営を目指しているa&o。
このようなホステルを体感したいと思い、2023年4月に、2020年にデンマーク・コペンハーゲンにオープンした「a&o Copenhagen Sydhavn」に宿泊してきました。

2023年5月現在、Copenhagen SydhavnのGREENSIGNの認証レベルは3。
【DO NOT DISTURB】の札の裏には、2025年までにnet zeroを掲げていることや、一般的なホテルと比較してCO2排出量が75%も削減できていることを示す記載がありました。
MISSON ZERO EMISSIONS(使命は排出ゼロ)を掲げ、部屋を出るときには電気を消すことを促す貼り紙(ユニットバスのドアに貼られていました)

こちらのホステルには、ゲストキッチンが設けられていて、ホステル側が食事提供を抑えている(レストランを設けない)ことも、CO2削減の1つの手段なのでしょう。
近くのスーパーでお米を買って鍋でご飯が炊けるので、コペンハーゲンで炊き立てご飯が食べられるのは日本人にとって魅力的です!

a&oが今後どのような取り組みをして、2025年のnet zeroを達成するかに注目していきます。

日本初のゼロ・エネルギーホテル『ITOMACHI HOTEL 0』

愛媛県西条市に2023年5月にOPENした ITOMACHI HOTEL 0 は、環境省が定める「ZEB」認証を取得した日本初のホテルです。

愛媛県西条市に本社のある、半導体機器製造メーカーで再生エネルギーや地方創生、まちづくり事業も展開する株式会社アドバンテック社と、国内外で話題のホテルを手掛ける株式会社GOODTIME社が、隈研吾氏の建築設計により開業しました。

予約時に無理を言って、ホテルの話を伺いたいと申し出たところ、なんとGOODTIME社の明山社長がお見えになり、館内外をご案内くださいました!

ゼロエネルギーの仕組みが一目で理解できるインフォグラフィックス

ホテルのレセプションに到着するとまず目に飛び込んでくるのは、インフォグラフィックス。
(そこまで目立つように置かれているわけではないのですが、私のように、ゼロエネルギーを目的として泊まりに来る人にとっては目に飛び込んでくるはずです)
以下で紹介するのはデモ画面ですが、ホテルが消費しているエネルギー量と生み出しているエネルギー量が掲載されています。
ZEBのために蓄電池とコージェネ(CGS発電機)も用意したものの、開業以来使用したことが無く、太陽光発電で全てまかなえているとのことでした。
また災害時の避難所としても機能するように、電力供給が止まっても72時間自家発電で電気が使えるようになっています。

水道代が無料の西条市

西条市は湧き水が豊富で、上水道が無料の市としても知られています。
水の豊富な西条市ならではで、客室には水の流れる仕組みがみられる透明の蛇口があります。

サステナビリティを徹底した客室アメニティ

客室には当然ペットボトルの水は置いておらず、西条の湧き水が入ったボトルが用意されています。客室からウォーターボトルに水を汲んで出かけることも出来るし、街中で水を汲むことも出来ます。
併設する『いとまちマルシェ』で買い物をするときにも使えるエコバックも用意されています。

滞在に便利な設備『ゲストキッチン』を併設

宿泊スタイルは、朝食付きプランはあるものの、夕食は提供しておらず『いとまちマルシェ』や近隣の飲食店を紹介しています。あるいは、ホテル内にキッチンがあるのでよそで購入したものを持ちこんで調理をすることも出来ます。
訪問者に滞在中に街中に出てもらうことは、ホテルがサステナブルな地域づくりに貢献するのに重要な視点です。

サイクリストの滞在にも最適!

客室内にそのまま自転車を持ち込める仕様となっている上、駐輪場、コインランドリーもあり、サイクリストの滞在にも適しています。サステナブルツーリズムへの相性も抜群です。

『愛媛のたのしみ』を0から体験―愛媛づくしのホテル

  • 客室の色調は、伊予青石を基調にしたブルー
  • 朝食は、地元愛媛の産地から仕入れた旬の野菜や果物を使用
  • 砥部焼の窯元「遠藤窯」によるオリジナル湯呑と急須
  • 松山市「ICOI COFFEE」によるオリジナルドリップパック
  • 西条発の銘菓「たぬきまんじゅう」
  • 愛媛有数のお茶どころ新宮町で、古くから新宮茶のパイオニア「脇製茶」の緑茶
  • 愛媛在住の和紙デザイナーによる和紙アート
  • 西条の水の音をサンプリングした自動温泉構築システム「AISO」による館内音楽

等々、愛媛にどっぷり浸かった滞在ができます。愛媛を中心にホテル建設にかかわった方々が紹介されたパネルもあります。

ITOMACHI HOTEL 0 の生まれた経緯

実はこのホテル。ホテルありきで造られたのかとと思いきや、アドバンテック社が西条市の住民から意見を募って作られたのだそうです。
同社が再生可能エネルギーの拠点づくりのために地方をめぐる中で「人がいない」「何もない」「活気がない」という日本の地方都市の厳しい現実を実感させられました。地元西条も例外ではなく、「街のにぎわいを取り戻したいこと」、「若者や挑戦する人にチャンスを与えられる街にしたいこと」の2つを趣旨にした上で、隈研吾さんとプロジェクトを始動。住民の意見を取り入れたところ、ホテルという拠点が採用されたとのことでした。
どうしても「日本初」という冠にはこだわりたかったという明山社長。
水資源が豊富な西条市というブランドとも相まって、日本初のゼロエネルギーホテルが完成したようです。
オープン後は、市民から「帰省した親族が泊まる場所ができた」と喜ばれているそうです。

ITOMACHI HOTEL 0 を訪れてみて

念願叶って訪れたITOMACHI HOTEL 0では、

  • ゼロエネルギーを視覚にして伝えるインフォグラフィックス
  • 愛媛県産のものをとことん追求・表現した設備、備品、アメニティ、食事
  • ゼロエネルギーホテルを謳いながらも僅か60㎡の客室に最新のエアコンが3台も設置されていること、それが必要ないほどの客室の機密性の高さ
  • ホテル外への回遊を促す滞在の提案
  • 宿泊客に媚びる(主張する)ことなくスタイリッシュにサステナビリティを実現していること
  • 地元住民の声から生まれて、支持されているホテルであること
  • 災害時の避難拠点となっていること

等、私にとっては興奮ものでしたが、私のように”ゼロエネルギー”が滞在動機となり泊まりにくる客は全体の3%程度だそうです。(企業や団体の視察は除く)

明山社長も、「なんか素敵なホテルだな」とか「評判の良いホテルだから」と泊まりに来たら、実はゼロエネルギーホテルだったと気付いてくれる位で良いと思っている とのことでした。

旅行者がサステナビリティに熱心に取り組んでいる宿を選ぶという消費行動はまだまだ先の話になりそうですが、サステナビリティに取り組む宿に泊まった事実というのは、結果的に宿泊客にとって後味の良いものになるのだろうと思います。
宿泊業では、滞在前と滞在中の印象を良くすることは比較的手が付けやすくアイデアも出やすいですが、滞在後の印象を良くすることは難しく、ハードルが高いものです。
その点、サステナビリティ経営に注力している宿は滞在後の評価を上げることができるのが大きなアドバンテージとなるのだろうと考えさせられた滞在となりました。


Sentosa Development Corporation has joined as a Member of the Global Sustainable Tourism Council (GSTC)

Global Sustainable Tourism Council(GSTC)とは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会は、世界的な旅行および観光分野における観光産業界の専門家や、政府機関のための持続可能な開発の基準を定め、管理する国際非営利団体です。