ESG of Tourism industry

UnTours Foundation が【Reset Tourism Fund】を設立

UnTours Foundationは、1992年設立。 世界初のB Corp(※)を取得した旅行会社 UnTours が前身となる財団です。UnToursの寛大な活動がベネフィットコーポレーション(B Corp)運動のきっかけとなったと言われています。

(※)B Corp …環境、社会に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度。米国ペンシルバニア州に本拠を置く非営利団体のB Labが運営。2023年2月現在、日本企業はダノンジャパン株式会社をはじめ20社が取得。

このUnTours Foundationは、UnTours からの利益と、資金提供パートナーおよび個人からの寄付を使用して、30 年の歴史の中で世界を変えるビジネスに約1,000 万ドルの融資と株式投資で、300 以上の企業に種を巻きました。

このUnTours Foundationが、世界中の影響力の大きい観光事業を支援するために1,000万ドル規模の「Reset Tourism Fund」を立ち上げました。

創設パートナーには、 Expedia Group、TUI Care Foundation、Adventure Travel Trade Association、Flywire、B Tourism が名を連ねています。

Reset Tourism Fundは、観光が与える世界規模の経済効果や環境影響が大きいにも関わらず十分な資金が流れていないことに警鐘を鳴らし、「観光の未来を形成し世界を変えるビジネスに適切な投資を」というパーパスを掲げています。

具体的には、

  • 適切な評価がされていない(過小評価されている)リーダーによるもの
  • ビジネスモデルに「コミュニティ強化」が含まれる
  • 貧困を無くし生計を立てらえるようなまともな仕事を提供する
  • 自然環境を利用することで、疲弊させるのではなく、再生させる
  • これまでターゲットとされてこなかった人々に、旅行者として有意義な体験を提供する

などが投資対象となっています。

いま現在、Reset Tourism Fundの目的に沿った投資事例として以下のようなビジネスが紹介されています。

Playa Viva …再生型ロッジビジネス。歴史・文化の上にエネルギー、水、土壌、生物多様性、人々、文化などを含む様々な「フロー」を重ねた地域資源のマップを作成。緑にはより少ないダメージで、持続可能性にはをネットニュートラルで、その土地をより良くする再生型ロッジを建てる。

GoPark Safaris…クライアントに、質の高い”一生に一度”の旅行体験を提供することに重点を置いた、ケニアを拠点とするツアーオペレーター。地元コミュニティからドライバーやガイドを雇ったり、地元コミュニティによって運営・管理されるツアーやエクスカーションを開始することで、ケニアで雇用が不足している場所に仕事を提供。より環境に優しいハイブリッド エンジン車両を使用することで、二酸化炭素排出量を削減。

ROAR…テクノロジーの力でより安全な職場づくりに専念する企業。職場のパニックボタン ソリューションは、ウェアラブル ボタンを1 回押すだけで従業員を保護。ホテルと戦略的に協力して、従業員に安全な環境を提供。併せて地元の政治家に、女性、特に有色人種の女性を保護するための法律の必要性を促す。

投資の世界から始まったESG経営がまさにそうですが、サステナブルな社会を実現するためには適切なところにお金を流す仕組みやレールが必要です。
UnTours Foundationはその役割を果たし、Reset Tourism Fundは観光業界の持続可能性を促進・追及を加速させる重要な役割を担っています。

日本初のゼロ・エネルギーホテル『ITOMACHI HOTEL 0』

愛媛県西条市に2023年5月にOPENした ITOMACHI HOTEL 0 は、環境省が定める「ZEB」認証を取得した日本初のホテルです。

愛媛県西条市に本社のある、半導体機器製造メーカーで再生エネルギーや地方創生、まちづくり事業も展開する株式会社アドバンテック社と、国内外で話題のホテルを手掛ける株式会社GOODTIME社が、隈研吾氏の建築設計により開業しました。

予約時に無理を言って、ホテルの話を伺いたいと申し出たところ、なんとGOODTIME社の明山社長がお見えになり、館内外をご案内くださいました!

ゼロエネルギーの仕組みが一目で理解できるインフォグラフィックス

ホテルのレセプションに到着するとまず目に飛び込んでくるのは、インフォグラフィックス。
(そこまで目立つように置かれているわけではないのですが、私のように、ゼロエネルギーを目的として泊まりに来る人にとっては目に飛び込んでくるはずです)
以下で紹介するのはデモ画面ですが、ホテルが消費しているエネルギー量と生み出しているエネルギー量が掲載されています。
ZEBのために蓄電池とコージェネ(CGS発電機)も用意したものの、開業以来使用したことが無く、太陽光発電で全てまかなえているとのことでした。
また災害時の避難所としても機能するように、電力供給が止まっても72時間自家発電で電気が使えるようになっています。

水道代が無料の西条市

西条市は湧き水が豊富で、上水道が無料の市としても知られています。
水の豊富な西条市ならではで、客室には水の流れる仕組みがみられる透明の蛇口があります。

サステナビリティを徹底した客室アメニティ

客室には当然ペットボトルの水は置いておらず、西条の湧き水が入ったボトルが用意されています。客室からウォーターボトルに水を汲んで出かけることも出来るし、街中で水を汲むことも出来ます。
併設する『いとまちマルシェ』で買い物をするときにも使えるエコバックも用意されています。

滞在に便利な設備『ゲストキッチン』を併設

宿泊スタイルは、朝食付きプランはあるものの、夕食は提供しておらず『いとまちマルシェ』や近隣の飲食店を紹介しています。あるいは、ホテル内にキッチンがあるのでよそで購入したものを持ちこんで調理をすることも出来ます。
訪問者に滞在中に街中に出てもらうことは、ホテルがサステナブルな地域づくりに貢献するのに重要な視点です。

サイクリストの滞在にも最適!

客室内にそのまま自転車を持ち込める仕様となっている上、駐輪場、コインランドリーもあり、サイクリストの滞在にも適しています。サステナブルツーリズムへの相性も抜群です。

『愛媛のたのしみ』を0から体験―愛媛づくしのホテル

  • 客室の色調は、伊予青石を基調にしたブルー
  • 朝食は、地元愛媛の産地から仕入れた旬の野菜や果物を使用
  • 砥部焼の窯元「遠藤窯」によるオリジナル湯呑と急須
  • 松山市「ICOI COFFEE」によるオリジナルドリップパック
  • 西条発の銘菓「たぬきまんじゅう」
  • 愛媛有数のお茶どころ新宮町で、古くから新宮茶のパイオニア「脇製茶」の緑茶
  • 愛媛在住の和紙デザイナーによる和紙アート
  • 西条の水の音をサンプリングした自動温泉構築システム「AISO」による館内音楽

等々、愛媛にどっぷり浸かった滞在ができます。愛媛を中心にホテル建設にかかわった方々が紹介されたパネルもあります。

ITOMACHI HOTEL 0 の生まれた経緯

実はこのホテル。ホテルありきで造られたのかとと思いきや、アドバンテック社が西条市の住民から意見を募って作られたのだそうです。
同社が再生可能エネルギーの拠点づくりのために地方をめぐる中で「人がいない」「何もない」「活気がない」という日本の地方都市の厳しい現実を実感させられました。地元西条も例外ではなく、「街のにぎわいを取り戻したいこと」、「若者や挑戦する人にチャンスを与えられる街にしたいこと」の2つを趣旨にした上で、隈研吾さんとプロジェクトを始動。住民の意見を取り入れたところ、ホテルという拠点が採用されたとのことでした。
どうしても「日本初」という冠にはこだわりたかったという明山社長。
水資源が豊富な西条市というブランドとも相まって、日本初のゼロエネルギーホテルが完成したようです。
オープン後は、市民から「帰省した親族が泊まる場所ができた」と喜ばれているそうです。

ITOMACHI HOTEL 0 を訪れてみて

念願叶って訪れたITOMACHI HOTEL 0では、

  • ゼロエネルギーを視覚にして伝えるインフォグラフィックス
  • 愛媛県産のものをとことん追求・表現した設備、備品、アメニティ、食事
  • ゼロエネルギーホテルを謳いながらも僅か60㎡の客室に最新のエアコンが3台も設置されていること、それが必要ないほどの客室の機密性の高さ
  • ホテル外への回遊を促す滞在の提案
  • 宿泊客に媚びる(主張する)ことなくスタイリッシュにサステナビリティを実現していること
  • 地元住民の声から生まれて、支持されているホテルであること
  • 災害時の避難拠点となっていること

等、私にとっては興奮ものでしたが、私のように”ゼロエネルギー”が滞在動機となり泊まりにくる客は全体の3%程度だそうです。(企業や団体の視察は除く)

明山社長も、「なんか素敵なホテルだな」とか「評判の良いホテルだから」と泊まりに来たら、実はゼロエネルギーホテルだったと気付いてくれる位で良いと思っている とのことでした。

旅行者がサステナビリティに熱心に取り組んでいる宿を選ぶという消費行動はまだまだ先の話になりそうですが、サステナビリティに取り組む宿に泊まった事実というのは、結果的に宿泊客にとって後味の良いものになるのだろうと思います。
宿泊業では、滞在前と滞在中の印象を良くすることは比較的手が付けやすくアイデアも出やすいですが、滞在後の印象を良くすることは難しく、ハードルが高いものです。
その点、サステナビリティ経営に注力している宿は滞在後の評価を上げることができるのが大きなアドバンテージとなるのだろうと考えさせられた滞在となりました。


Sentosa Development Corporation has joined as a Member of the Global Sustainable Tourism Council (GSTC)

Global Sustainable Tourism Council(GSTC)とは、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会は、世界的な旅行および観光分野における観光産業界の専門家や、政府機関のための持続可能な開発の基準を定め、管理する国際非営利団体です。